【野遊びのススメ】#11 パラグライダーで空中散歩

「空を飛ぶ夢」かなえた

コロナ禍で鬱屈(うっくつ)した気分を晴らすため、非日常的な体験がしたい―。取材の移動中などに時たま目にするパラグライダーを見て、いつかは空を飛ぶ夢を温めていた。いつかは?今でしょ!と心を決め、パイロットと一緒に飛ぶタンデム(2人乗り)の体験飛行に挑戦した。

鬱屈した気分晴らす圧倒的解放感

タンデムはライセンスを持つパイロットが操縦してくれるので、パラグライダーの経験はなくて大丈夫。今回は「木崎湖フライトパーク」(大町市)の体験メニューを利用した。湖の北のほとりにある着陸場(標高約780メートル)近くで受け付けを済ませ、湖の西の小熊山にある離陸場(同約1280メートル)へ車で移動。ここからは湖と周辺が一望できる。
ハーネスやヘルメット、浮き袋、手袋を装着し、まずはパイロットの指導で離陸の練習。小走りで前進し、機体が立ち上がったら全力で走り、空中でもしばらく走り続けるように教わる。平地を数メートル走ると、その先は斜面。おじけづくが、足を止めると危険という。
飛び立つ方向に真っすぐ向いて風を待つ。パイロットが吹き流しを確認し、「そろそろ行きますね」。つばを飲み込んで覚悟を決め、一緒に駆けだす。間もなく足裏が地面を離れ、ぐわっと体が浮き上がる。「ゴー」という風の音や圧を想像よりも強く感じ、自分が飛んでいることを確認できた。
圧倒的な開放感に、さっきまでの緊張はどこへやら。見える景色は全てが新鮮で、鳥の目を手に入れたようだ。湖面に太陽の光がきらきらと反射し、パラソルを広げた釣り船が小さく見える。大きく旋回しながら時速30キロほどで進み、徐々に高度を下げて湖畔の着陸場に降り立った。離陸から約15分。夢のような時間だった。
フライトパークの代表でエリア管理者の森春雄さん(76)は「風が当たる音など、自然を肌で感じて楽しめる」とパラグライダーの魅力を語る。秋は紅葉や後立山連峰の新雪も美しいという。何度飛んでも飽きないはずだ。
「空を飛びたいという思いは、きっと人類のDNAに組み込まれているんですよ」。ライセンスを取得し、ソロ飛行に訪れていた男性がにこやかに話す。見上げた青空に、カラフルな翼が映えた。

【パラグライダーのタンデム飛行】

中信地区では大町市や白馬村、生坂村などで体験できる。木崎湖フライトパーク(TEL090・5769・5181)は5~11月の金~日曜と祝日、午前8時~正午。対象は小学生以上。1人1万2000円(別に保険料500円が必要)。前日までに要予約。気象状況で飛行できない場合がある。