【小林千寿・碁縁旅人】#21 盤上と土俵の「待ったなし!」

2013年、九重部屋で大ファンだった元横綱千代の富士の九重親方と

御嶽海大関・誕生!

大相撲の初場所で、上松町出身の御嶽海関が優勝し、大関に昇進!長野県に江戸時代の雷電以来227年ぶりの大関誕生とあって、松本出身の私も大喜びです。
初場所は御嶽海関が土俵へ上がる前の静けさ、集中力が特に感じられ、期待していました。ぜひこの勢い、精神力、体調を維持し、横綱を目指してほしいです!
私の囲碁の師匠・木谷實九段は関東大震災の折に相撲部屋に居候していた経験から、「木谷道場は相撲部屋のように優秀な若手を一緒に住まわせ、学ばせる」というアイデアを得たそうです。道場では相撲観戦はもちろんのこと、師匠が親しくしていた二子山部屋の朝稽古を兄弟子たちと何回か見学もさせていただきました。
当時は碁と相撲の共通点など全く分からなかったのですが、今は相撲を観戦する時に力士の立ち居振る舞いで「いい精神状態だな~」「気合が入っているな~」「どんな作戦を立てているのだろう?」と囲碁で培った経験と重ね合わせて観戦しています。
土俵で行司の「待ったなし!」という声を聞くと、盤上の「待ったなし」(プロ棋士同士の対局で待ったをすれば即座に負け)と重なり緊張感が走ります。
結びの一番の立行司が持つ脇差は本当の短刀で、行司が差し違えをした時には「切腹する覚悟」の意味だと聞かされ、「日本文化」だな~と感心しました。
相撲界にも碁を嗜(たしな)んだ力士もおられます。私が碁を打ったことがあるのは1974年ごろに大鵬の親方の二所ノ関親方(佐賀ノ花)と。早打ちでドンドン押してきてすっと引く、正しく相撲感覚の棋風でした。年末のお餅つきなどに呼んでいただき楽しかったです。
その後、囲碁のお弟子さんの伝手(つて)で2013年に元横綱千代の富士が率いる九重部屋を2回訪問させていただきました。
今はコロナ禍で稽古もままならず本当に大変だと思います。でも、それを乗り越えて頑張っている力士を見ると、私たちは元気をもらえます。頑張ってください!応援しています。
(日本棋院・棋士六段、松本市出身)