【記者兼農家のUターンto農】#43 飼料不足

覚えておきたい「耕畜連携」

「餌がないんですよ」と、三村誠一さん(60、松本市波田)は声を落とした。前回取材した三村牧場の経営主だ。紙面掲載の連絡をしたところ、電話口から飼料をめぐる恨み節がこぼれてきた。
思い出したのは、取材時に「牛は食べるのが楽しみなんだ」と、牛舎に向けた優しげなまなざしだ。その楽しみの種を与えるのに苦労しているという。
主因は輸入が滞っていること。国内の畜産飼料は、4分の3を海外に頼る。なのに、新型コロナウイルスの感染拡大で、港湾で働き手が足りなくなるなどして、世界の物流が大混雑しているという。
試しに、全国酪農業協同組合連合会のウェブサイトをのぞくと、飼料に絡めて北米のコンテナ船情勢が詳しく解説されていた。ここでもコロナ禍なのだ。
農水省の調査によると、昨年12月の飼料価格は前年比で17%高かった。「ばか高いうえに足りない」と三村さんは実感を込める。三村牧場の牛たちは、年間600トンほど食べる。1キロ当たり数十円の値上がりが、千万円単位のコスト増につながる。中信地区の酪農家には、廃業を決める人もいるという。
生乳の売値が上がればいいが、そうは問屋が卸さない。「消費者が理解してくれればいいが」と三村さん。ましてや、余るから飲んで─と訴えるような時だ。「農家は努力するだけ」という言葉に、思わずうなずいた。
ただ、三村さんは受け身だけではない。自ら飼料栽培にも取り組んでいる。借りた農地も合わせ、40ヘクタールでライ麦などを育てている。
他方、私自身に近い田畑関連のニュースを見渡すと、米など飼料用作物への注目に気づく。調べると、畜産から堆肥をもらい、田畑で飼料を耕作して返すという流れに名前が付いていた。「耕畜連携」。循環型の取り組みとして、SDGs(持続可能な開発目標)の文脈で語られることもある。
海外から、国内、地域内との連携にシフトする。三村さんたちとすぐにつながることは難しいが、コロナ下と、その先の未来を考えるのに覚えておきたい言葉だ。