【記者兼農家のUターンto農】#117 サル追い払い隊㊤

探索は最新技術と人の目で

サルを追い払いたいから「サル追い払い隊」をつくった─。8月上旬、そんなニュースに思わずにやけた。だが、主体が安曇野市で、60人余もの組織と聞くと、笑い話では済まない。名前のストレートさが切実に響いてきた。サルの農作物被害はかねて聞く。活動が見たい。
8月下旬、穂高有明地区の集合場所に、当番の隊員5人が集まった。初参加が2人いて、指導役として市耕地林務課の木村将海主事が加わった。
そろったところで、さてどこへ?「アニマルマップの情報を基にサルの群れに近づきます」と木村さん。
同市西部の山麓には数百匹のサルがいるとみられる。いくつかの群れには、発信器を付けた雌が紛れている。その位置情報を見るのがアニマルマップ。隊員のスマートフォンに入れる地図アプリだ。
ただ、この情報は大まかで何時間も前のもの。正確な位置をリアルタイムで知るには、小型アンテナを手に、周辺を歩き回る必要がある。最新技術の力を借りて200~300メートルまで近づき、最後は目視で見つける。
「出合ったら山側へ追いたいと思います」と木村さん。里はいるべき所ではないとサルに継続的に教え込むのが隊の目的だ。ミッションの見通しを付け、午後3時過ぎ、探索を始めた。
サルの発信器の電波を求めて手持ちアンテナをかざす隊員の後について、林の中を歩き回る。反応があるまでは手持ち無沙汰。自然に食害の話題になった。
同市堀金烏川の岩原地区の丸山峰雄さん(67)は「芋類は全部駄目。ネギもナスも」という。地区で電気柵を設置したが、効果は一時的。「サルの餌を作っているようなもの。作るのをやめたくなる」と苦笑いしながらこぼす言葉に、別の隊員がうなずいた。
松本平の反対側、東山山麓にあるうちの周辺はシカの食害に手を焼いているが、サルの方が、作物は手当たり次第、犯行は大胆という感じ。深刻だ。
「ピッ」。歩き始めて約1時間、アンテナの端末が、電波を拾ったことを知らせた。