【野遊びのススメ】#26 川下り・大自然の懐に飛び込む

川面から見る別世界

「この季節は川下りがお勧めですよ」。アウトドアに詳しい知人からそんな情報が入った。一口に川下りといっても、どんな川をどんな道具で下るのか未経験の記者にはピンとこない。不安を抱えつつ、趣味で楽しんでいる早川徳美さん(41、松本市里山辺)夫婦に同行させてもらった。
山小屋を運営する早川さんは、学生時代にラフティング競技部だった夫の誘いで、2年前から川下りを一緒に楽しんでいるという。お供した11日は、犀川を龍門渕公園(安曇野市明科)付近から生坂村方面に下ることにした。
用いたのは2人乗りのインフレータブルカヤック(ダッキー)と、1人乗りのパックラフト。どちらも空気を入れて膨らませるタイプで、畳めて持ち運べる。ダッキーは水面をこぎ進む後ろ姿がアヒルに似ていることにちなむ。
この日の気温は26度を超えたが水温はまだ低い。防水と寒さ対策のため、水にぬれやすい下半身はタイツの上にレインウエアのズボン、ネオプレーン(合成ゴム)の靴下、膝下から足首までを覆うゲイターなどを付けた。
ライフジャケットを装着しいざ川へ。記者は早川さんの夫と一緒に2人乗りのダッキーに、徳美さんはパックラフトに乗って出航した。
川の流れに乗りながらパドルをこぐ。川底の石が見える場所もあれば、湖のように深い場所も。地形の変化をダイレクトに感じる。安定感のあるボートで緩やかに進み、水の流れが激しい場所では水しぶきを浴びて川の迫力も味わった。
手を休めて周囲を見回すと、山々に咲く桜や残雪の北アルプス、芽吹きの樹木が美しい。遠くからはウグイスの鳴き声が聞こえ、水面にはオシドリやマガモなどの姿が。癒やされながらあっという間にゴール。1時間余りで約7キロの水上散歩を楽しんだ。
4、5月は雪解けのため水量が多く、透明度も高くて川下りにいい時季という。水量が少ないとなかなか進まないので、早川さん夫妻は事前にインターネットで水量や川の様子などを調べ、現地で下見をしてから可否を判断している。
気軽に川に入る人も増えているが、テトラポットや倒木などに当たると命の危険もあるという。順調にこいだつもりの記者も、プロ級の腕前の2人のかじ取りのおかげで進めたのだ。
「川の真ん中は誰もいなくてのんびりできるのが魅力。近くにこんなにきれいな川があるなんて最高ですよ」と大阪出身の徳美さんの言葉に納得。もっと経験を積み、新たな景色を見てみたい。

【川下り】初心者は経験者に同行するか、専門店の体験ツアーに参加するのがお勧め。中信地区は犀川などが会場。道具のレンタル代込みで2~3時間8000円ほど。