【ガンズリポート】シゴトを語る #4 フットボール部スカウト・江原俊行さん

目と直感信じ若手育つ環境に

2012年、J2に初参戦した松本山雅は、開幕戦で東京ヴェルディと対戦しました。私は当時、相手方のスカウト。味の素スタジアムに来た山雅サポーターにびっくりしました。その数の多さと熱気に「愛されているんだ」と思いました。
これからもっと強くなると思ったクラブに翌年、縁あって入りました。当時の山雅は、新卒選手のスカウトに手が回らない状況でした。そこからクラブをつくっていくことに、魅力を感じました。
スカウトの仕事は、06年からしています。どこにどんな選手がいるのか、情報収集のネットワークの網を広げてきました。
いい選手がいると聞けば、必ず自分の目で確かめに行きます。47都道府県すべてに行きました。コロナ禍になってからは主に車移動で、年間の走行距離は5万キロになりました。
指導者と話していると「こんな選手がいる」と教えてくれることがあります。その1人が、日本代表になった前田大然(現セルティック)。見に行って、スピードとスプリントの回数に驚きました。技術的には見劣りしましたが、プレーから向上心がにじみ出ていました。
選手評価の基準を表現するのは難しい。私の場合は、自分の目と直感を大事にします。
横山歩夢は、ドリブルのうまさと足の速さに目を引かれ、もっと周りを使えるようになれば、すごい選手になると、伸びしろも感じました。2年目の今年は、プレーに落ち着きが出てきた感じがします。
実は、普段の立ち居振る舞いも変わったんです。昨年末に強く諭しました。どのくらい影響したか分かりませんが、多少はこたえたと思います。
新卒で来たら、プロの環境に振り回されるものです。スカウトの仕事は、契約して終わりではありません。時には選手と腹を割って話し合い、悩みを吐き出させることもあります。
最近、外部の人から「チームが若返ったね」と言われます。山雅なら若い選手が成長できる-と思ってもらえるようになれば。スカウトとしても、今がチャンスと思っています。
大学生や高校生を最初に練習参加させる時は、できる限りホームゲームに連れて行きます。あの熱気を感じてもらう。契約に至った選手はみんな、「あのピッチに立って活躍したい」と言います。サポーターは、山雅の大きなアドバンテージなのです。