【記者兼農家のUターンto農】#58 夏至

早くも「収穫の秋」を思う

1年で日が最も長い時季を迎えている。リーフレタスの朝出荷が始まった5月初めは、畑に出る時間帯はまだ薄暗かったが、今やすっかり明るい。
実家は松本盆地の東の山裾にあって、西の方を向くと、北アルプスの山並みが見渡せる。梅雨の晴れ間には、背後の山から昇る太陽の光が、まずアルプスの山頂を輝かせる。澄んだ光は麓へと下り、山容を鋭角的に照らし出していく。「寝ちゃいられねえ」。家族で一番早起きの父が、感じ入ったように言った。
夏至が、今年は21日に来る。この日を過ぎると、だんだんと日が短くなって、やがて再び出荷の時に朝焼けを楽しめるようになるだろう。暦の折り返しを思うと、これから盛夏が控えているというのに、収穫の秋に思いが及んでしまう。
「短日植物」という区分があることを最近知った。日が短くなっていく時期に花を咲かせる植物のことを指すという。アサガオ、コスモスがそうだ。逆が「長日植物」で、カーネーションはこれに当たる。
イネは短日植物だった。ということは、そろそろ子孫作りの準備をしているのだろうか。実際、温暖な地方で夏に収穫され、超早場米として出回るような品種はそうらしい。
ただ、一般的な品種の開花は当分先のことだ。子孫の前に、自分の体をしっかり作らないとならない。
うちの田んぼのコシヒカリにとって、今は苗の根元から新しい茎を出す「分けつ」の時期だ。田植えの時の本数から倍、3倍…と増えていく。不思議で、観察するのが面白い。
体作りにも子孫作りにも、適度な光と温度がいる。梅雨入りは平年並みだったが、これからはどうなるのか。朝の光景に期待と心配が入り交じるときがある。