【記者兼農家のUターンto農】#87 汚泥肥料(中)

農高生実験結果実家で検証

下水処理場で出た汚泥を肥料にできないかと、2019年から研究している南安曇農業高校生物工学科。先輩から引き継いだ生徒の一人、高橋里歌さん(3年)は、「最初は興味がなかったが、実験していくうちに意識が高まった」という。
取り組んだのは、汚泥を入れた土壌と化成肥料を施した土壌、何もしない土壌で生育を比べる実験。すると、「割とはっきり違いが出た」。汚泥を入れた土で、コマツナ、アスター、ヒマワリが化成肥料の土と同じくらいの育ちぶりを見せ、中にはより旺盛に育つ株もあった。
もともと作物を育てるのが好きな高橋さんは、結果に引きつけられた。卒業論文にまとめ、1月28日の学内発表会で披露した。汚泥はそのままでも肥料として利用できるとし、施す量や効果を長持ちさせる工夫が今後の課題と指摘した。
一緒に研究した柏木まえさん(3年)は、期せずして肥料高騰という時事問題とつながったことに面白さを感じている。「研究を広く知ってもらう機会になる」
3年生の成果や思いは、来年に引き継がれる。折よく、うってつけの後輩がいる。
中野幸太さん(1年)は、安曇野市の実家で営む「アルプス農事」が水田40ヘクタールを作る。祖父が興した法人は自分で引き継ぐつもりで、「肥料の高騰は切実」と訴える口ぶりは経営者のよう。「汚泥実用化の一歩にしたい」と、手がける田んぼで栽培実験をする。
立岩雅樹さん(1年)の実家は1ヘクタールほどを耕作している。小規模農家のメリットになればという視点で研究に参加する。
人材や土地のつながりを生かして、校内から現場の実践へと研究がスムーズに展開する。教育評論家の尾木直樹さん(尾木ママ)が、年初の日本農業新聞に寄せた「農業高校こそ学びの最先端を実現している」という言葉を思い出した。
連携はさらに広がる。卒業生が独自の汚泥研究を携えて、この冬、母校を訪れた。