【小林千寿・碁縁旅人】#48 世界中の碁縁に感謝

2007年にドイツで開かれた少年囲碁大会で子どもたちが作った碁石アート

このコラムも今回で丸2年、最終稿になります。
コロナ禍で海外に行き難い状況で、囲碁を通じて観(み)たこと感じたことを、その頃の世界事情に合わせて書きました。どのエピソードも「碁」という一つのゲームを通じて世界中で見聞きしたことです。
私は松本市中町で生まれ、4歳半で碁を覚え、6歳で故・木谷實九段に入門。高校2年でプロ棋士試験に受かり現在に至るまで現役棋士として碁を打ち、世界に「日本文化の囲碁」を広めてきました。
その間、中国、韓国、台湾の囲碁の台頭があり世界中に囲碁人口が増え、今や世界囲碁大会が開けるほどに普及しました。
2017年5月、人工知能(AI)にとって一番難しいといわれていた囲碁で人間を超えました。それは人間社会に「AI」が幅広く使用されるきっかけとなりました。
ところが最近、トップ・プロ棋士を負かす囲碁AIの弱点、盲点が見つかったのです。それも初心者並みのミスをするのです。碁盤全体ほどの大きな石のグループになると、自分の大石の生死が認識できなくなり暴走します。
偶然この2月に来日中だったAlphaGO(アルファ碁=人間を負かした最初のAI)チームのプログラマーと食事した時に、その棋譜を一緒に観戦しました。
そして、その優秀なプログラマーは一言、「コンピューターを信じ切ったらいけないよ!」と警告してくれました。
実際、盤上で起きたことが、他の分野、例えば、医療、武器などで起きたら人間の命に関わる大惨劇が起きます。人工知能も、まだまだ進化中であることを忘れてはいけないと知らされた出来事です。
最後に。数千年の歴史がある囲碁というゲームを通じ世界の歴史を身近に感じ、世界中に友人ができ、そして囲碁AIを通じて現在から未来の動向まで身近に感じます。
このコラムを紙面、ネット記事で読んでいただいている皆さまに深く感謝の意をお伝えします。そして平和で健康な日々を心より祈ります。(日本棋院・棋士六段、松本市出身)
(おわり)