松本市教委・総括コーディネーター 幅誠一郎さんに聞く- どう変わる「部活動の地域移行」

主に公立の中学校教員が担ってきた部活動を地域のクラブなどに移行する「部活動の地域移行」が動き出しています。従来とどう変わり、メリットは何かなどを、松本市教育委員会の部活動地域移行市総括コーディネーター幅誠一郎さん(61)に聞きました。

移行の理由は主に三つ 「少子化」「専門性」「働き方改革」に対応

─部活動の地域移行の理由は。
大別すると三つあります。一つは「少子化による生徒数の減少」。団体競技だと1校だけでは必要人数を満たせず、他校との合同チームで大会に出場している、部員不足で部活動の存続自体が危機にさらされているという現実があります。
二つ目は「専門性の問題」です。中学校の運動部顧問を対象にした県教委のアンケート(2021年)では、約6割が「担当している競技の経験がない」と回答しています。一方で、子どもや保護者からは専門性の高い指導を望む声が多く、ギャップが生じています。
三つ目は「教員の働き方改革」です。文部科学省が公表した2022年度の公立学校教員の勤務実態調査の結果によると、国が残業の上限として示す月45時間を超えて勤務した中学校教員は77・1%に上り、部活動指導はその一因と考えられます。
国は本年度から2025年度までの3年間を「改革推進期間」と位置付け、まずは「休日の部活動」を地域クラブなどに委ねる改革を進めています。ただ、山間地の多い県内は、移動や指導者の確保が難しいため、県教委は26年度末までに移行する方針を示しています。
─地域移行のメリットは。
子どもたちが「やってみたい」競技や文化活動を選択できる機会が増えることだと思います。例えば平日の部活動はバスケットボール、休日は地域クラブでダンスなど、異なる活動を行うことも可能になります。
また、「強くなりたい」(競技志向)、「楽しんでやりたい」(レク志向)など自分の目標・目的に合わせられる、休日は休養や学習に充てるため参加しないといった多様なニーズに応じられる可能性もあります。

人材確保や負担増課題 現場の声聞き実情把握へ

─課題は。
専門性に加え、教育者としての資質も備えた人材を十分に確保することは容易ではありません。また、本年度から条件を満たす地域クラブが、県中学校体育連盟主催の大会に出場できることになりましたが、同じ活動で部活動(平日)と地域クラブ(休日)に所属した場合、どちらのチームで参加するかなどの課題もあります。保護者にとっては月謝の支払いや、活動場所が遠いと送迎などの負担が増えることも予想されます。
松本市は、子どもたちの「やってみたい」という気持ちを、可能な限り実現に近づけることを第一に考えています。6月には有識者や専門家でつくる協議会を発足。現場の生の声を聞き、実情や課題を把握していきます。
文化部も、可能な活動は地域移行を推進していく方向です。
─市内のモデルケースは。
4月から「まつもと城東バドミントンクラブ」がスタートしました。土曜日に市内の体育館で開催(1回530円、要申し込み)しており、公立・私立に関係なく、市内に在住・通学する中学生は誰でも参加できます。