【ブドウ畑に吹く風~記者のワイン造り体験記】#6 茂る夏

成長の早さに終わらぬ世話

雨と30度超えの暑さが交互に続き、ブドウの成長が最も盛んな7月上旬。ガクファーム&ワイナリー(松本市笹賀)の垣根仕立てのブドウは、2メートル以上の高さに。葉は手のひらほどに大きく青々と茂り、結実したブドウの粒も1センチ近くに膨らんできた。つい先日花が咲いたと喜んでいたのに、ブドウの成長は本当に早い。
ブドウは樹勢が強く、放っておけばどんどんつるを巻き付け成長する。しかし、自由に伸ばしてはそちらに養分を取られ、大事な房に栄養が行かない。
このため、キャノピーマネジメント(樹冠管理)が大切となる。一度世話しても、畑を一巡した頃にはまた次の世話が必要になる。
行う作業としては、一番上(高さ約180センチ)に張られたワイヤの上にとび出ている新(しん)梢(しょう)を、10センチほど残してカットする「摘心」。自由に伸びる枝をワイヤ内にきちんと入れ上へと伸ばす「誘引」(オーナーの古林利明さんは「枝入れ」と呼ぶ)。伸びた副梢(新梢から出る脇芽)の整理|などがある。
最高気温32度の暑い日、自宅横の畑で、古林さんと一緒に作業に臨んだ。フランス・ブルゴーニュの代表的赤ワイン品種、ピノ・ノワールの手入れだ。
育てるのが難しい品種と聞くが、具体的に何が難しいのか。まず、土地の条件を敏感に反映する品種で適応性が低い。さらに「皮が薄く粒が詰まっているので、病気になりやすいし、粒も割れやすいんです」と古林さん。
なるほど、ワインの味わい同様、品種自体の性質が繊細なのだ。人間ならさしずめ、神経質で気むずかし屋の知識人、という感じだろうか。ブドウの性格が分かると対処法も分かって面白い。
繊細で早熟なピノ・ノワールには、早めのレインカット(雨よけ)設置が必要。というわけで、レインカットのタイミングで、同時に枝入れや副梢整理を行った。その模様は次回。