PTA私の思い③

時代に合った活動へ筑摩野中の取り組み

小中学校のPTAの在り方についての関心が高まり、中信地域でもいろいろな動きが出ています。松本市の筑摩野中学校(村井町北、生徒数678人)では、PTAという組織を変え、ボランティアによる有志活動にしようと動き出しています。改革に至った経緯と目指す新しい形について、関係者に話を聞きました。

委員会立ち上げ課題検討

活動を「見える化」 現状と代替案とをシミュレーション

「筑中PTAは学校だけのことではなく、地域のことと思って関わってきた」と話すのは、約10年前に同校PTA会長を務めた会社員の手塚貴雄さん(58)。家族形態や親の勤務状況が大きく変化しているのに、組織はほとんど変わっていないことに「今のままでは成り立たない。限界にきている」と、保護者や学校から声が上がっていました。
手塚さんは長年PTAに携わってきた経験から2018年、PTAの在り方や役員決めなどの課題を検討する総務企画委員会(歴代PTA役員と町会長経験者計8人で構成)の委員長を任されました。
コロナ禍の22年度、同校はそれまで対面で行っていたPTA総会を書面での議決に変更。自由に意見を募ったところ、「役員に対するねぎらいの言葉が多かった一方、PTA組織に対する不満の声が多数あった」と事務局の児玉亨教諭(60)は言います。
PTA加入の意思確認をとると、20年度の加入率90%から22年度は70%に。保護者からは、加入者は会費を払い役員の可能性もあるのに、未加入でも子どもへの恩恵は同じという不満が相次ぎました。
役員決めは年々難航し、直前に退会者が集中する状況も。毎年関わってきた手塚さんは、「“参加損、欠席得”という雰囲気で、嫌な思いをして互いの関係悪化も心配な状況だった」と深刻に受け止めてきました。
総務企画委員会では、なくしてはいけない活動を明確にするなど「見える化」し、現在のまま続けた場合と、新しい形に移行する代替案とをシミュレーションするなど話し合いを重ねました。その間、インターネットを利用して保護者の意見も聞き、反映させました。
同委員会では、「保護者はPTA活動には協力したいし、子どものためになるならやりたいが、役員にはなりたくないという。そこが現行のPTAの問題」「重要なのは、PTA組織としてこだわってきた仕組みや活動ではなく、保護者や先生が子どもたちに向けたメッセージをどう発信し、それを実感できるかどうかだ」。議論は白熱しました。
改革案を示した理事会(当時のPTA役員や学校職員ら24人)でも、PTAをなくし活動を減らすことへの抵抗感、学校とのつながりが希薄になる懸念などが挙がり紛糾しました。手塚さんは「学校や現役役員にはさまざまな事情がある。経験者で第三者的立場の私がしっかり方向性をもってやらなければと思った」と振り返ります。

任意参加型団体へと移行

組織を変えよう 名称は「筑中りんどう会」

理事会と評議員会(学級会長と支部長計35人)の賛同を受け、「時代や身の丈に合った任意参加型団体へ変えていこう」と決まり、昨年末、保護者に議決を取ると96%が賛成。新しい団体の名称を募ると120超の案が集まり、「筑中りんどう会」に決まりました。
現在、元PTA役員や元総務企画委員、現・前校長などでつくる準備委員会が月1回あり、話し合いを重ねています。委員の保護者代表の一人、林茂樹さん(53)は「新しい有志団体へ手を挙げてくれている人もいる。検討課題はたくさんあり、保護者や地域の声を聞き、説明しながら進めていきたい」と話します。
筑中りんどう会のメンバーは、保護者に限らず地域の人、OB・OG、かつて勤めていた職員など、さまざまな人が参加することを思い描いています。児玉教諭は「変えたことにより、生徒・保護者・教員・地域にどういう影響が出たかを検証していかなければならない」。手塚さんは「戦後から70年続いた組織を変えたことは大きい。すぐに結果を求めるのではなく、何年かけてでも時代に合った良いものをみんなでつくり上げていきたい」と話しています。