「まつば助産院」を利用した3人に聞く- 助産院での出産体験談

赤ちゃんもママも命懸けで臨む出産。病院だけでなく助産院や自宅で産むママもいます。松本市波田の「まつば助産院」(松葉はるみ代表)を利用して出産した3人の体験談を紹介します。

健康なら自然なお産を
鮫島有希(ゆうき)さん(塩尻市、富山県出身)

静岡県の助産院で助産師として働いていた鮫島さんは、「健康体なら自然なお産をしたい」と考えていました。そして結婚し妊娠。住んでいた地区には入院分娩(ぶんべん)できる助産院がいくつかあり、緊急時の提携病院も整っていたといいます。
健康管理に気を付けながら予定日を迎え、長男満希(みつき)ちゃんを出産しました。産後は部屋を移動することなく過ごし、翌日から退院までの1週間は仕事を終えた夫も一緒に宿泊。食事も共にしました。
3年前に夫の転勤で松本市へ引っ越し、次男夏希(なつき)ちゃんを授かります。長男が幼いこともあり、一緒に過ごせる自宅出産を選択。しかし、妊娠判定を受けた病院で医師に伝えると、「今後うちでは診られない」と言われます。
戸惑い悩んでいたとき、長男が通う保育園で、まつば助産院で出産したママに出会います。訪問して希望を伝えると快く引き受けてくれ、助産院が嘱託する医療機関で妊婦健診も受けられました。
出産当日は助産師2人の介助で、無事に次男が誕生しました。
頼れる人がいない中で自宅出産を選び、感じたのは、自分の身の回りの世話や家事、上の子の育児全般を頼める人が必要だということ。
「自宅出産を受け入れ、1カ月の育児休暇を取って面倒を見てくれた夫には感謝の気持ちでいっぱいです。体が健康なら、私のように自宅や助産院で産めます。助産院を利用する人の輪が広がってほしいです」

理想の出産人生に影響
太田彩さん(松本市井川城、愛媛県出身)

太田さんが助産院での出産を選んだきっかけは、独身時代に見たドキュメンタリー映画「玄牝(げんぴん)」。現代医学の技術を取り入れつつも、昔ながらの自然なお産を後押しする愛知県の産院に集う妊婦や家族、スタッフ…。その姿を見て自分も助産院でと決めていました。
2019年、長男楷(かい)人(と)ちゃんを授かります。当時住んでいた埼玉県では助産院の情報が少なく、1人目という不安もあり、自宅近くのクリニックで出産することにしました。
分娩台に上がり、いよいよ生まれるとなった時、助産師から「あおむけになって」と指示されます。「つらい」と言うと、「ごめんね、病院ではこの体勢でしか産めないの」。二重のショックを受けます。
さらに産後は子どもと一緒に、一般患者もいる大部屋で過ごすことに。毎日、わが子の泣き声が迷惑になるのではと気を使い、夜中の授乳では、つけた照明に苦情を言われたこともありました。
夫の転勤で2年前に松本市へ引っ越します。長男と通っていた未就園児サークル「ひなたぼっこ」(波田)のスタッフが、まつば助産院で出産したことを聞いた頃、次男瑛翔(えいと)ちゃんを授かります。
里帰り出産は考えていなかったため、迷わず同助産院での出産を選びます。
陣痛が来たのは真夜中。夫の運転で長男も一緒に助産院へ向かい、そのままみんなで泊まることに。出産は畳の上で、体勢も自由です。
「明け方に生まれるまで助産師さんはずっと近くにいてくれ、腰をさすったり呼吸を手伝ってくれたりと本当に心強かったです」。産後も周囲を気にすることなく赤ちゃんの世話ができたといいます。
「女性にとって出産は、人生の大仕事です。自分の思いがかなう幸せなお産ができたかどうかは、その後の人生に影響する。助産院で産む選択肢もあることを多くの人に知ってほしいです」

どう産みたいか考えて
岩田繭(まゆ)さん(安曇野市三郷小倉、埼玉県出身)

保育士として働いていた岩田さんは、助産師の保護者との出会いや、助産師になった元同僚の話を聞き「出産は助産院で」という思いが芽生えます。
長男朔(さく)君を妊娠、当時住んでいた埼玉県で助産院を探しますが、近くになかったため総合病院で出産します。5年後に安曇野市に移住し次男季(とき)ちゃんを妊娠。「今度は助産院で」と、出産した数人から情報を得ます。
中信地区で分娩を扱う4施設をすべて見学するつもりでしたが、最初に訪れたまつば助産院に決めます。「松葉さんの人柄と、お産する畳敷きの部屋から見える庭の景色に一目ぼれでした。暮らしの延長に出産があるんだなと感動しました」
万が一の時の嘱託病院の話も聞き、夫も賛成。家族が立ち会い、念願だった助産院で出産します。長男(8)は怖がることもなく「本当に頭がとんがって出てくるんだね」などと言い、冷静に見守っていたといいます。
入院中は松葉さんを母親のように慕い、「疲れたから休みたい」と言うと、少しの間、赤ちゃんを預かってくれたと言います。3人目の長女琴(こと)ちゃん(1)の出産も、まつば助産院を選びました。
「健康体なら『どこで産もう』より、『こんなお産にしたい』と、おなかの子と一緒に考えてみてほしいです」

中信地区の分娩を扱う助産院

〇助産院ウテキアニ(安曇野市穂高有明)TEL0263・83・6676
〇助産院愛花(あろは)(同市豊科)TEL090・1869・8303
〇あゆみ助産院(松本市渚3)TEL0263・28・2511
〇まつば助産院(松本市波田)TEL0263・911167
〇助産院おりん(池田町会染)TEL090・9857・5538