中学校教諭・舟越さんに聞く― 男性の育休取得、日常の変化は

男性の育児休業に対する認知や理解は少しずつ進んでいるものの、実際の取得率は17.13%(2022年度雇用均等基本調査)と低く、人手不足や仕事の性質などを理由に育児休暇を取らない・取れないという人も多くいます。第2子の誕生で初めて育休を取得した中学校教諭、舟越曉(あきら)さん(36、安曇野市)に話を聞きました。

思い悩んでも夫婦力合わせて

★初めて育休を取得
舟越さんは、中学校教諭の妻友紀さん(29)と長女湊音(みなと)ちゃん(2)、7月に生まれた長男千颯(ちはや)ちゃんとの4人暮らし。湊音ちゃんが生まれた時は退院日から3日間休みましたが、育休を取るのは初めて。千颯ちゃんが生まれる直前から来年3月までを予定しています。
毎日の育児では、主に湊音ちゃんの面倒を見ています。勤務していたときはほとんどしていなかった掃除、ごみのまとめ、洗い物、料理(週1、2回)も協力。「『ただ休むだけ』とならないよう、意識して育児を分担しています」

★感じた孤立感
育休に入った当初は、子どもとじっくり向き合い触れ合えると喜びでいっぱいでした。しかし、2週間がたった頃から孤立感を抱くように。
思い通りの生活ができない、子どもの要求を満たそうとすると自分の予定が崩れてしまう、家族以外の人と関わりがない、この生活が半年以上続くのか…どんどん不安が広がり「1カ月はつらかった」といいます。
そんな状況を変えようと、友紀さんの提案で、家族で児童館や公園へ出かけるようにしました。すると身近なイベント情報などを入手できたり、近所の子どもとつながるきっかけが持てたり。新たな刺激を受けたことで、孤立感はなくなりつつあるといいます。
同時に生活スタイルも変えました。湊音ちゃんが起きる前に家事などやるべきことを終える、自分のペースでできる時間を確保するといった行動を意識。気持ちが楽になり、過ごしやすくなりました。日記をつけるようにもなったといいます。

★育休を取得して
第2子誕生後は、妻の負担を少しでも減らしたいと育休取得を決めていた舟越さん。昨年11月に妊娠が分かると、新年度の体制を考えすぐに校長に伝えました。県教委も育休取得を後押しし、教員仲間も取得しているため、周りの理解もスムーズに得られました。
「現時点で育休を取って良かったと思います」と舟越さん。湊音ちゃんとの関係も変わりました。育休を取る前は、何かあると「お母さんじゃないと駄目」でしたが、最近はどちらでもいいような感じに。2人だけの外出も不安がなくなりました。
「自分は育児に向いていない。一番報われない時期」と思い悩む時もあるという友紀さん。そんなときに舟越さんがいてくれるのは心強く、孤独感が和らぐと言います。
「育休を取ってくれて本当にありがたいです。育児はもちろん、何より家にいてくれること、話せることが私の精神健康を保つ上ですごく助かっています」

【改正育児・介護休業法】
男性の育児休業の推進を目的に2021年6月成立。昨年4月から段階的に施行された。事業主は従業員に育休取得の意向を確認することや、取得しやすい環境の整備が義務化され、10月からは子が生まれて8週間以内に計4週分の休みを2回に分けて取れる「産後パパ育休制度」(出生時育児休業制度)がスタート。今年4月から従業員千人超の企業は男性育休取得率の公表が義務付けられた。