【像えとせとら】玄向寺と金宇館 牛の石像(松本市大村・里山辺)

地蔵と守り神それぞれのルーツ

松本市の美ケ原温泉とその近くに、形や姿がよく似た2体の牛の石像がある。その距離は直線で500メートルほど。作者など何か関係があるのだろうか?
1体は玄向寺(大村)の境内に=写真上。荻須眞教住職(76)によると幕末の1867(慶応3)年に作られ、そのいわれはこうだ。
牛馬が農作業の担い手だった当時、お役御免になった1頭の牛が処分されに向かう途中、寺の前で突然暴れだして境内に飛び込んだ。事情を聞いた時の住職、立月(りゅうげつ)和尚は牛をふびんに思い、農民から買い取った。
しばらくして和尚が大病を患うと、牛が病気になって死に、和尚は回復。牛が身代わりになったと「牛地蔵」としてまつった。「毎日参拝に来る人もいます」と荻須住職。
もう1体は老舗旅館「金宇館」(里山辺)の玄関先に=写真下。うし年生まれの初代館主・金宇儀道司さんが1928(昭和3)年に創業したころ、36歳の年男になった記念に作ったという。
建物は今春、当時のままに改修を終えた。玄関をじっと見つめ続ける牛に、4代目の正嗣さん(36)は「これからも旅館の行く末を見守ってくれる守り神です」。

2体はともに全長約1・5メートル、高さ約1メートルで作者は不明。似ていても関係はなかったが、それぞれのルーツが分かったのは収穫だった。