【中村小太郎・駆け出し百姓の自然農奮闘記】#11 根張り重視の中干し

「中干し」。私は農業を始めるに当たり、自然農法センター(松本市波田)の水稲栽培指導で初めて聞きました。田植えから穂が出るまでの間に、せっかく張った田んぼの水を抜くのです。この工程は自然農法でも、ものすごく大事です。
稲は、水のある田だと垂直方向に「田んぼ根」を伸ばしますが、乾燥すると雨水を求めて水平方向に「はたけ根」を張ります。自然農法の中干しは、はたけ根にするためです。
自然農法は根張りを大事にします。慣行栽培では、手近に肥料がふんだんにあるので、根が長く伸びません。自然農法は無施肥なので、根が貪欲に伸びます。根には菌根菌がすんでいて、菌糸を伸ばして土中のミネラル分を吸収します。届かないところも、微生物の協力を得て取り入れようとします。最近の研究では、微生物の働きは私たちの腸内微生物の働きによく似ているそうです。腸内フローラも多様さが大事ですよね。
代わりに、稲は光合成で作ったブドウ糖を菌根菌や微生物に提供します。自然農法では、この共生関係をとても大事に考えています。田植えで隣の稲との間隔を取る疎植にするのは、お隣と干渉せずに存分にはたけ根を張ってもらうためでもあります。
自然農法のお米「小太郎米」がおいしく感じるのは、この土中ミネラルが養分になってるからでしょうか。私はそう信じて育てています。