【記者兼農家のUターンto農】#71 稲刈り

台風対策に心を配る

今年の稲刈りは早めにした。
いつもより暑い夏を過ごし、9月半ばには稲穂が十分に垂れた。そして、台風14号が迫っていた。
荒天後の稲刈りには苦い思い出が多い。昔の稲は背丈が高かったのか、よく強風で倒伏(とうふく)した。バインダーで根元を起こしながら刈るのは手間だった。
バインダーとは、稲を刈り取って束ねる機械。コンバインと違って脱穀機能のない小型機で、人の力で操作する。倒れた稲は、そのコントロールを難しくする。
ぬかるんだ田んぼも厄介だ。バインダーがはまり込んで動かず、ロープを結んで引っ張り出すということがあった。足を取られながら稲束を運び、泥を落としてはぜに掛ける作業は本当にきつい。
そんな苦労はなるべく避けたい。「稲刈りした方がよくない?」と父に言ってみた。穂の実り具合と台風の進路予想を見て、去年より1週間ほど早い稲刈りとなった。
昔は全部の稲をバインダーで刈ったが、今は自家用に食べたり贈ったりする分だけ。残りは業者にコンバインで刈ってもらう。
バインダー刈りだと、その後、はぜに掛けて天日で干し、さらに脱穀機でもみを取る。人手がかかる。
一方、コンバインは刈り取りと脱穀をいっぺんに行い、もみは速やかに大型乾燥機にかけられる。天日干しの方がおいしいとされるが、労働力の限られた家族農には、コンバインの力はありがたい。
台風の先手を打った今年のバインダー刈り。もくろみ通り、作業は順調に進んで、はぜ掛けも済んだ。
やれひと安心、と思いきや、台風は近づくにつれ、雨よりも風がすごそうとなってきた。はぜが倒れる被害も、過去に何度も味わった。さて今回は…。
20日朝、田んぼではぜはちゃんと立っていた。ほっとした。
だが、通勤途中、いくつかの田んぼで稲が倒伏していた。「稲刈りは大変だろう。ブドウやリンゴ農家も被害を受けたのだろうか」。Uターンして、台風後に考えることが増えた。