自給率高めたい誇り持って
畑の隅で作る青色大豆「あやみどり」のさやが茶色くなった。6月の種まきから5カ月。熟してきた。
さやを割ると、青々とした豆があった。夏に枝豆として食べたときのみずみずしい青さから、落ち着いた色合いになっていた。
普通の大豆はどうなのか。以前、取材した松川村の高橋克弥さん(28)を訪ねた。大豆の有機栽培者だ。
収穫は最終盤。畑には、根元で切った株が逆さまに立てられていた。天日に干して、脱穀機にかける。
大豆専用の脱穀機を、高橋さんは個人で買ったと聞いて驚いた。「最近の北安曇では1人だけらしいです」
投入口に大豆の株を突っ込んでいく。内部でさやが砕かれ、風で分離されて、豆だけが機械に付けた袋に入る。基本的な仕組みは、米と同じだ。
「なかなかいい出来です」。豆を手に取った高橋さんは、うれしそうだ。おなじみの大豆らしいクリーム色。「すずほまれ」という品種で、多くはみそやしょうゆなどになる。
50アールほど作り、売り先の業者や個人は、ほぼ決まっている。その単価が普通の大豆の数倍と聞き、また驚いた。米も、有機の自然乾燥は高めだが、これほどではない。
背景に自給率がありそうだ。米がほぼ国産で賄えるの対し、大豆はたった6%。同じように日本の食生活に欠かせない作物なのに、だ。「国産の有機大豆を求める人は、意外なほど多い。可能性のある作物だと思う」と高橋さん。
栽培には、少しでも自給率を高めたいという思いもある。「誇りを持って作ったものを、地元で消費してもらえればいい」。ローカルな“食料安全保障”と言うと大げさか。
「安曇野の風景といえば山と田園ですが、一角に豆があってもいいですよね」。有機に限らず、大豆の大きな葉っぱが、そこかしこで揺れる。若い農業者は、時代に応じた農村の将来の風景を、そう描く。