【ビジネスの明日】#46 高橋タイヤ商会社長 松田憲明さん

危険を摘み取り安全を売る

「事故など、お客さんの『万が一』をできるだけ少なくしたい。安全を売るのが仕事です」。こう語るのはタイヤ・ホイール販売、修理などの高橋タイヤ商会(松本市渚1)の松田憲明社長(38)だ。創業100年に迫る老舗企業の4代目を昨年継いだばかりで、「大きな責任を実感している」と気を引き締める。
同社は松田さんの曽祖父・高橋憲義さん(故人)が1927(昭和2)年、松本市国府町(深志2)で創業。以来、戦中・戦後、高度成長期、バブル経済期など時代の荒波にもまれながら、一貫してタイヤ販売を主力にしてきた松本平の最古参だ。
「一つのことを100年近く続けるのは大変なこと」と、先人らに敬意を表しながら、「次の代へ会社をつなげていくのも役目」と心得ている。
現在は、タイヤ販売に加え、初春と初冬の年2回のピークがあるタイヤ交換と、交換した数百台分のタイヤを保管、管理するのが主な業務。
預かったタイヤは、社屋の2、3階に保管しており、「社内に保管場所があるのが、料金を安く抑えるのに大きなメリット」とし、「トレーラーなどの大型車のタイヤを扱えば売り上げは大きいが、主は個人客。タイヤを身近に保管していると、状態がよく分かり、お客さんとコミュニケーションを取りながら、適切なアドバイスができるのも強み」と強調する。
自動車はガソリン車などから、電動車などへ移行する大きな過渡期を迎えているが、タイヤのニーズと果たす役割は、「車が空でも飛ばない限り」今までと同じだ。
ただ、電気自動車が主流になれば、車体の重さや、加速の仕方など、車の特性によって、これまでの自動車とは違う負荷がタイヤにかかってくる可能性もあり、「それぞれの車に合ったタイヤを薦めるのが新たな商機につながるのでは」と予想する。

高校までは野球に熱中。卒業後、都内の大学に進学したが「将来の目標が見いだせなかった」と中退。「その頃には家業を継ぐ意識はあった」と、松本に戻って、同社に入社。3代目で現在会長の父・則男さん(71)の下で修業し、「良い商品、確実な作業で安全を売る」社是を体に染み込ませた。
「タイヤの接地面積は、4本ではがき4枚分といわれ、ここで安全を支えている。お客さんが何を求めているかを考えながら、危険を摘み取っていかなければ」と強く思っている。

【プロフィル】
まつだ・のりあき松本市渚出身。松本深志高卒。大学中退。2022年9月、社長就任。同市出川町在住。