【記者兼農家のUターンto農】#94 風食対策その後

“枯れ草”に見いだす希望

3月半ば、朝日村の一角に農業団体や行政の関係者、報道陣が集まった。前に顔を合わせた昨年10月は、足元の畑はむき出しの土だった。今は、多くの部分が緑に覆われている。一見すると雑草のような植物たちが、一同の関心事だ。
畑のことは昨年11月26日の回で紹介した。その後が今回になる。
一帯は、毎年春先に強風が吹き、広大な畑の土を巻き上げる。せっかくの肥えた土も、空に舞い上がれば迷惑者だ。干した洗濯物を汚し、車のドライバーの視界を遮る。
この「風食」を防ぐため、春先の地表を効果的に覆う植物を見つけようと、県などが実証実験に取り組んでいる。試験地の一つが、朝日村の畑だ。
昨秋の種まきは、10人足らずで行った。5カ月後、一冬越えた成果を確かめようと40人近くが集まった。
試している植物は4種。ライムギと、マメ科のヘアリーベッチ2種、それに花のハゼリソウだ。
生育旺盛なのはライムギだ。ただ、元気過ぎて、風食の心配がなくなってすき込んだ後に、なかなか腐らない。レタスなどの作物を植えられるまでに時間がかかる。
その点、ヘアリーベッチは丈が短く、腐熟は速そう。肝心の地表も一面緑で頼もしい。
逆に、ハゼリソウは冬の寒さで枯れてしまい、ペタッと倒れている。だが、土を覆う役割としてはありだという。むしろ、すでに枯れているので作土になじむのはヘアリーベッチより速い。「すき込んですぐ(作付け作業に)いけそう」「(検証ポイントは)そこだね」。現場で意見が交わされていた。
さらにハゼリソウは窒素を蓄える緑肥にもなる。枯れた状態でどのくらい効果があるか、調べるという。
“枯れ草”が一番の注目株になるとは。それに、肥料を減らせるというのは耳より情報だ。それほど強い風は吹かず、対岸の火事にように眺めていた風食の対策だが、一農業者としても関心が湧いてきた。