【記者兼農家のUターンto農】#115 温室効果ガス

やはりよくない過剰な肥料

緑肥作物のソルゴー(ソルガム)は2、3カ月で背丈2メートルほどに育つ。春作のリーフレタスの後に種まきしたものが、夏真っ盛りに刈り頃を迎えた。強い日差しを浴びる葉っぱのじゅうたんを眺めながら、地球温暖化が気になった。
ある畑のじゅうたんが激しく波打っていた。作物の成長にむらがあるのは、土中の養分に差があることを推測させる。「大雨で流れちゃったかな」と父は残念がった。同じ畑でも場所によって水はけが違う。そもそも春先に肥料をまいたときに偏っていたのか。
いずれにしても、まだら模様な育ちは、養分の足りなさや、逆に過剰さを思わせる。それが気になった。
というのも、土中の窒素肥料から温室効果ガスが生まれることを知ったからだ。
7月22日の回で、田んぼからメタンが発生することを紹介した。今回の現場は畑で、問題となるガスは一酸化二窒素((N2O)、亜酸化窒素)。またの名を笑気ガス。でも、この話題はあまり笑えない。
窒素成分に土壌微生物が作用して、(N2O)は発生する。大気中に放たれると、長く滞留し、熱を吸収する能力も高い。あいまって、単位重量あたりの温室効果は二酸化炭素(CO2)の約300倍にもなるという。ちなみにメタンは25倍だ。
世界の(N2O)の人為的な発生源は農業分野が6割ともされ、そのまた3割が化学肥料由来。全体の発生量が少なく、あまり話題にならないが、農水省の温暖化対策には、(N2O)の排出削減策として適正な施肥などがしっかり盛られていた。
窒素を化学的に大量生産できるようになって食料の安定供給が実現し、地球の人口は増えた。そのバランスがどこかで崩れて、食料生産の現場が環境を脅かすことにつながってしまっている。
うちの畑が温暖化に大きく影響しているとは思えない。異常な暑さの中、ソルゴーの育ちのアンバランスさに苦い連想を誘われたが、肥料のやり過ぎがよくない理由は増えた。