【記者兼農家のUターンto農】#105 安全講習

口伝は限界あり どうすれば?

親から教えてもらえる環境も善しあしだ。
日が長くなり、あぜや土手の草がよく伸びる。草刈りが忙しい。
Uターン以来、刈り払い機を扱うようになった。方法は、父に一通り教わったが、十分なのか心もとない。
折よく、講習会の開催を知った。主催は地域団体「松本農業女子くらら」。主に女性向けというが、取材しながら学びたいと、6日、会場の塩尻市塩尻東地区センターを訪ねた。
JA松本ハイランドや農機大手ヤンマーから講師が来ていた。刈り払い機のほか、管理機(小型耕運機)、トラクターのことも教えてくれる。
刈り払い機については、作業中に目を保護するゴーグルが大事だといった、知っていることも多いが、専門家の言葉は、なぜか父より説得力がある。
トラクターには、さらに学びがあった。ブレーキペダルの踏み間違えであっさり横転するとか、斜面の上りは後進で、と機械の特性から説いてくれる。
事故例も効果的だった。写真にイラスト、そしてデータだ。
長野県は2021年、全国で唯一2桁となる15人が農作業事故で亡くなった。中山間地での転倒が多いとみられる。
他産業との比較にも驚いた。全国の死亡者数の推移をみると、建設業や交通事故では1970年代から徐々に減っているのに、農業はほぼ横ばいだ。
一因が個人(家族)経営の多さだという。きちんとした研修機会が足りない。「口伝では限界がある」とヤンマーの担当者。まさにうちのこと、図星だ。
こうなると、「トラクターに限らず、農機具は全て危ないものと思ってほしい」という言葉が胸に刺さる。でも実際、今回のような機会はなかなかない。どうすれば?「取扱説明書の熟読が一番。ネットの動画もいいものがあります」
「トリセツを読め」とは父に口酸っぱく言われていた。聞くべき言葉、知るべき教えは身近にあった。反省した。