【ガンズリポート】 信大医学部×山雅 試合観戦巡る協力に広がり

医療の地域活動浸透へ

試合観戦を巡る松本山雅と信州大医学部の協力が広がっている。妊娠中や幼児連れの女性向けに観戦エリアを設けたり、子育ての相談ブースを開いたりしてきたのに続き、今夏は音や光が苦手な人でも観戦できる特別室を、2試合で試験的に設けた。信大側には山雅との活動を通し、地域との垣根が低くなってきた手応えがあるという。

7月16日の福島ユナイテッドFC戦と8月12日のカターレ富山戦で、サンプロアルウィンの放送中継室の一つが、感覚過敏の人向けの「センサリールーム」になった。
ピッチを一望する窓の半分をパネルで覆ったのに加え、靴を脱いでくつろげるように床材を敷き詰め、クッションを置いた。
富山戦では、松本市内の男の子(11)が利用した。母親(43)によると、幼い頃に発達障害と診断され、にぎやかなイベントは諦めていたという。
この日、夜のお出かけは初めてという男の子は、試合の最後まで過ごせた。ルーム内にも場内アナウンスや応援の声が聞こえてきたが、落ち着いていた。母親は「おうちのようにリラックスできた。私も外出先ではいつも子どもが気になるが、今日は楽しめた」と笑みを見せた。
ルームの設計は、空間デザイン事業を展開する乃村工藝社(東京)が担当。共生社会の実現を掲げ、今年2月に松本市美術館で赤ちゃんと一緒に鑑賞する企画を信大医学部と行ったのが縁で、今回同学部が山雅との橋渡し役を担った。

今回を含め、同学部で山雅との企画を担ったのは、妊産婦や産後の母親らをケアする「周産期のこころの医学講座」。始まりは2021年、産後うつの診療にも携わる村上寛医師(38)が、予防的効果を目指して地域全体に関わる方法を探る中で、山雅との協力を思いついた。
親の観戦を助ける「ママサポ」を企画し、試合日に相談ブースを出して自ら応じた。「大学病院というと偉そうに思われがち。山雅の発信力に乗り、地域の中で活動しているという実感を持ってもらえれば」と村上医師。実際に最近は山雅のつながりで、大学に相談に来る人もいるという。
「一人でも多く観戦に来てもらうため、障壁があるなら乗り越えようという山雅の考えは、私たちが見ている目標と重なる。3年一緒にやってきて、実感している」と村上医師。サッカーと専門医療とのコラボは、さらに深化しそうだ。