繊細精緻な切り絵地図 松本市美術館でaikautauさん個展

繊細で精緻な仕上がりとデザイン性の高さから、もはや「抽象画」と呼びたくなる。
松本市のaikautau(あいかうたう)さん(32)が、2017年から作り続ける「切り絵の地図」。現在、同市では初の個展を市美術館(中央4)市民ギャラリーで1月28日まで開催し、約80点を展示している。
国内外の行ってみたい場所や思い出の場所を作品にした。「前々から松本城に行きたかった」と、今は自身の生活の場となったお城一帯の地図もある。「模様に見えた作品が、実際に暮らすと地図に見えてきた」と、見え方の変化に気付いた。
7.5センチ四方の小さな紙に刻まれたのが地図か模様かは、見る人次第だ。

「切り絵地図」の制作をライフワークにしているaikautauさん。7.5センチ四方の白色の折り紙を使用する作品は、道路や川などがミリ単位で細かく刻まれ、初めて見た人は「葉脈や人体の毛細血管のよう」といった感想を抱くという。
作り方はこうだ。ネット上で公開されているフリー素材「オープンストリートマップ」で作りたい場所の地図を探す。主に縮尺が2万5千分の1のものを使う。川や道幅などを編集し、それを下絵にし、デザインカッターで切っていく。
当初は下絵と折り紙を2枚重ねてトレースしていたが、今は技術も向上し、直接下絵を切る。地図に忠実に切ると全体がつながらない箇所が出てくるため、同じ道でも切ったり残したりするという。
1枚完成させるのに要する時間は約8時間。これまでに約200枚を制作し、インスタグラムで公開。2017~18年に制作した東京都の中野車両基地(中野区)や東小金井駅(小金井市)の地図に大きな反響があり、「人に見せることを意識した作品作りのきっかけになった」という。
東京出身。保育士をしており、仕事で切り絵の経験があった。2017年、東京スカイツリー(墨田区)の展望台から、眼下の下町を俯瞰(ふかん)した。「切り絵にしたら楽しそう」と思った。
その頃、付き合っていた男性(現在の夫)が東京から愛媛県に転勤。遠距離恋愛になり、「彼の新たな生活の場が、どんな所か気になって」地図で調べた。この二つの出来事が重なり、切り絵の地図を作るきっかけになった。
地図を切り絵にすると、地図本来の役割は失われ、aikaさんも自身の作品を「デザインとして見ている」という。「紙を切っている最中は『ここはこんな所かな』などと空想したり、今住んでいる場所をもっと知りたいと思ったり。限りなく自由になっている」。aikaさんにとって自己表現の手段だ。
昨年4月から松本の住人になったが、夫の仕事の都合で数年後には移住する。aikaさんは「地図をきっかけに、地元の人と交流できるのもうれしい。信州は作品にしたいスポットが満載で、暮らしている間はとことん切りまくりたい」と意欲満々だ。
個展は午前9時~午後5時。入場無料。aikaさんは終日会場に滞在し、25日午前11時と27日午後1時半から、ギャラリートークを行う。問い合わせは秋葉さんTEL050・5374・8888