通訳ガイド新入会員大幅増 実地研修受け活動開始

アルプス善意通訳協会 自分磨きと社会貢献を

「勉強してきた英語を使ってみたい」「外国から来た人に松本を楽しんでもらう手助けをしたい」─。
国宝松本城を訪れる外国人観光客に通訳ガイドなどを行うボランティア団体・アルプス善意通訳協会(略称ALSA)。本年度の新入会員が7日、松本城で実地研修を受け、活動を本格化させた。新加入は32人。退会者もいたため会員総数は149人となり、前年度より22人増えた。増加数は2016年度の35人に次いで多い。
松本城ではこの日、桜の開花宣言があり、ALSAの案内待機所には、ガイドを希望する外国人観光客も多く見られた。松本や松本城の魅力を伝え、交流の橋渡し役となる通訳ガイド。先輩会員の話に耳を傾けた新会員には、自分磨きと社会貢献の“両得”を目指す期待と緊張のスタートだ。

外国人との交流 会話力向上期待

アルプス善意通訳協会(ALSA)が7日に行った実地研修には、新会員27人が参加した。7人の研修委員にそれぞれ新会員3、4人が付き、堀の周辺や本丸庭園を回った。
外国人観光客の案内は約1時間が目安。研修委員長の横山忠敏さん(75、松本市里山辺)は、松本城の特徴や国宝5城など必要な知識を説明し、「ガイドの一方的な話にならないよう、会話形式でやった方がいい」と心構えをアドバイス。新会員は真剣な表情でメモを取った。3月に英語の座学研修を受けており、今後、先輩会員に付いてトレーニングを行い独り立ちする。

通訳ガイドの志望動機は、会話力向上とともに、外国人との交流を望む人が多い。
内藤なつ子さん(51、同市和田)と美咲さん(21)は親子で参加。「英語の勉強をしたいのと、通訳をすることで外国人と仲良くしたい」と美咲さん。美咲さんは高校時代、ニュージーランドへの留学経験がある。大学へ進学後、短大へ入り直したが「英語でコミュニケーションできる場がほしかった」と、ALSAの活動にその機会を求めた。
英語は独学で趣味程度というなつ子さんの入会は「娘をサポートする」ため。会話力を磨き「できればホームステイを受け入れたい」との夢を持つ。
2年前、登山が好きで県外から移住した公務員の大城江里奈さん(安曇野市)は「英語を話す機会がほしいし、松本のことも知りたい」。59歳で英語の勉強を始めALSAでの活動を目標にしてきた岡田純子さん(60、松本市女鳥羽)は「会話を勉強して外国人の困っていることを助けたい」との思いだ。
久々の大量入会に、理事長の中田和子さん(同市沢村2)は「知識として得た英語を使ってみたいと思う人が、やる気を持って参加してくれているので、うれしい。松本城の人気の高まりもあるだろうが、自身が学びながら、何らかの形で社会に役立つことができればいい」と話す。

設立から33年目を迎えたALSA。会員数は2017年度の173人をピークに減少傾向だったが、24年度は16年度以来、8年ぶりに大幅増だ。一方、案内した外国人の数は23年度に初めて1万人を突破した。円安の影響もあり、今後も外国人観光客が増える傾向が続くとみられ、通訳ガイドの役割は大きくなりそうだ。