ビジネスモデルの実証実験
エプソン関連のソフトウエア会社入社と同時に住み始めた塩尻市で、特産のワインに強く引かれた。システムエンジニアとして働く傍ら、社内のビジネスアイデアプロジェクトに応募し、2021年から毎年、日本ワインを生かすビジネスモデルの実証実験をする。
上田市出身。信州大の学生時代、産官学連携活動の一環で学生と地元企業を結ぶ活動に携わり、信州の良さに目を向け始めた。
ワイン振興に取り組むきっかけは、「塩尻に住んで初めて日本のワインがおいしいと思ったから」。大勢の地元ワイナリーオーナーと触れ合ううちに、ワインだけでなく「人」の取り組みや熱い思いを伝え、消費者とつなぎたいと思った。
初年度は、ワイナリーのオーナーシップ制実現のためマッチングアプリなどを企画。2年目は、市内のワインイベントで、好みのワインに出合えるアプリを来場者に提供し、試してもらった。どちらも目新しさはあったが、利益を回収できるビジネスモデルにまではならなかった。
23年度は視点を一新。「地方副業×ワインづくり」プロジェクトと題し、人材不足などの地域の課題解決と、ワインを通じた塩尻の関係人口づくりの双方に乗り出した。コロナ禍を経て働き方が変わり、地方移住や農への関心を高めた都市在住者を想定。夏から半年間、2拠点生活をし、エプソンアヴァシスでの副業とブドウ栽培作業などで週1日程度、塩尻で過ごしてもらう内容だ。
食品加工関連の自営業者や外資系企業のコンサルタントなど、高い技能を持つ4人が塩尻と居住地を行き来した。彼らの助言やノウハウは会社のメリットとなり、プロジェクト協力ワイナリーにもファン拡大などで一定の成果があった。
集大成となる24年度も、新たな事業を模索中。ワイン造り体験をビジネスとするコンセプトで、「参加者が幅広く地域との接点を持てる場になるよう企画したい」。
システムエンジニアながら好きなワインに関われる。「運がいい。たまたま塩尻に住んだ縁と、会社がチャンスをくれたおかげ」と笑う。プライベートでもワイン関連の人に会ったり、ブドウ栽培に関わったりと、フットワークも軽く奔走する。