早春の安曇野に飛来 2羽のコウノトリ

保温のため首や胸、背中の羽を大きく膨らませたコウノトリ。初めて見る生態を1200ミリの超望遠レンズで捉えた(3月14日午前8時30分)

今月14日早朝、安曇野市豊科南穂高の田んぼで、国特別天然記念物のコウノトリ2羽が確認された。氷点下の朝、ひたすら動かず羽を目いっぱい膨らませて保温し、寒さに懸命に耐えていた。夏のスリムなイメージからは想像できない、安曇野で初めて見る“防寒”の姿をカメラで追った。

羽膨らませ寒さに耐え

【寒さに耐える】
安曇野へのこの時季のコウノトリの飛来は、過去の例と比べて最も早い。2羽は遠目にはほとんど動きがなく、「白くて丸い田園のモニュメント」さながらだ。が、超望遠レンズが捉えたのは、寒さに耐えるため羽を膨らませた「膨羽(ぼうう)」と呼ぶ姿だった。
首の前に大きく膨らんだ、奇妙な形に見える羽に目がくぎ付けになる。長く大きなくちばしを、羽の中に包み込んで保温している。初めて見る、命の鼓動が伝わってくるようなコウノトリの姿に、胸が熱くなった。

【寄り添う2羽】
飛来した2羽のうち、1羽は個体を識別する「足環(あしわ)」を付けていた。上が緑で下が黄色。兵庫県立コウノトリの郷公園(豊岡市)に尋ね、昨年5月3日に茨城県神栖(かみす)市の電柱の巣で生まれ、7月8日に巣立った1歳の雌と分かった。足環がないもう1羽は、海外から飛んできた可能性もあるという。

【また帰っておいで…】
記者への一報は午前6時過ぎ、日本白鳥の会副会長の会田仁さん(74、穂高有明)からだった。「この時季に来ても餌がない」と心配する会田さん。好みはカエルやドジョウ、昆虫類だ。
気温が上がった9時過ぎに歩きだし、翼を広げるなど動きが激しくなった。「飛ぶかも」の予感通り9時27分、高く舞い上がった。2羽の姿が白銀の北アルプスに溶け込む。会田さんは「暖かくなったら帰っておいで」と呼びかけて見送った。