生息環境悪化で保全活動も―小学3年からチョウとガ撮影・宮田さん

「故郷を放っておけない」

小学3年の時からチョウやガを本格的に撮り続け、毎年写真展を開くなどライフワークにしている池田町出身の宮田紀英さん(26)。県外の企業に勤めるが、拠点は一貫して地元だ。同町でも気候変動などでチョウの生息環境が悪化しており、最近は環境保全活動も始めた。「故郷を放っておけない」と足元を見詰め続ける。

子どもの頃から写真展続け

「ここが、自分がチョウやガに魅せられるきっかけをつくってくれた、原点ともいえる場所」。同町会染のあづみ野池田クラフトパーク内の学習施設「創造館」の入り口に立つ宮田さんの視線の先に、球形の街灯がある。
「小学2年生の頃、街灯の光に集まるガを見た。幾何学的な模様に衝撃を受け、ガやチョウに一気に魅了された」
小学生になった頃まで、虫全般が苦手だった。虫好きの先生と出会い、わずかに興味が湧いて図鑑などで「観察」するようになり、「本物が見たい」と親に頼んで連れてきてもらったのが、この場所だった。
同館一帯をフィールドにチョウやガを撮影するようになり、小学4年の時、同館と同じ敷地にある安曇野東山包美術館で初めて写真展を開催。以降も毎年開き、社会人になって3年目の今夏で18回目になる。「子どもの頃から写真展を続けるって、珍しくないですか?」と少し得意げだ。

まずは「町」を隅々まで探検

宮田さんは現在、環境調査や評価、子ども向けの環境教育の企画などを手がけるグリーンフロント研究所(本社・愛知県岡崎市)に在籍。会社がチョウに関する活動を理解してくれ、週の3分の1は本社、残りは地元でテレワークという勤務態勢になっている。
「生物学的ではなく、社会学的にチョウを見ると」と切り出したのは、信州大人文学部(松本市)で学んだ際、後継者不足の三才山小日向神楽(同市)のおはやしの演奏にゼミで取り組んだり、同町広津の楡室神社に伝わる獅子神楽の復活に携わり、同大学院の修士論文にまとめたりと、チョウ好きとは別の顔を持っているから。
「その土地の生き物だけでなく、伝統文化なども人間が手を入れないと廃れてしまう。逆に、きちんと手を入れれば自然にも文化にも多様性が生まれ、地域が活性化する」
町内を流れる高瀬川の河川敷では、外来植物のニセアカシアが繁殖。チョウの生息環境にも悪影響を及ぼすため、駆除活動に本腰を入れ始めた。珍しいチョウを探して世界を股にかける、自然写真家への憧れはある。しかし今は「池田という『広大なフィールド』を、隅々まで探検したいと思っている」という。