昇竜―勢いに乗って 高みを目指して挑戦する中信人

勢いのある例えとして「昇竜」が使われるように、竜には高く昇っていくイメージがある。辰年に勢いに乗り、高みを目指す中信の人たちに話を聞いた。

出張型サロンのトリマー 勝川滉也さん(24、大町市常盤=写真右下)
ペットの健康寿命延伸を

経験を積み、昨年秋からフリーランスのトリマーとして活動を始めた。現在は飼い主宅に出向く出張型トリミングサロン「ペットサロンはにぃ」を運営。飼い主やペットの移動の負担、ストレスを減らし、「ペットの健康寿命を延ばしたい」と張り切る毎日だ。
大町市出身。小学校低学年の頃、黒柴の「ちょこ」を家族に迎えた。トリミングできれいになった愛犬の姿からトリマーに興味を抱き、将来の目標に。南安曇農業高校(安曇野市)生物工学科動物バイオテクノロジーコースから専門学校へ進み、トリマー資格と愛玩動物飼養管理士1級を取得した。
静岡県の動物病院に就職し、トリマーと看護助手を3年間経験。昨年春、地元に戻ってサロンで働き、11月に独立。20代前半での挑戦に踏み出した。
餌の改良や医療の進歩などで、ペットの平均寿命は延びている。高齢の飼い主も多い現状から、出張型に。飼い主にトリミングの様子を見てもらったり、シャンプーのこつを伝えたりでき、好評だ。
「トリマーによる定期的なトリミングは、病気や体調変化の早期発見につながる。最低でも月1回が望ましい」。利用しやすくするため、料金は犬種別でなく時間単位にした。「ワンちゃん、猫ちゃんにより良い生活を送ってほしい」。臨床経験を生かし、飼い主に寄り添える存在として、フットワークよく飛び回る。
出張エリアは大町市、池田町、松川村周辺など。トリミングコースは最初の1時間3千円、その後は15分ごと500円。詳細はホームページ(https://rrps5hbep6169wv9vj.wixsite.com/petsalonhoney)。TEL080・7745・0434

相談所「大人の保健室」運営 近藤真貴さん(38、松本市=写真右上)
悩み抱える大人の駆け込み寺に

「働く大人や母親の駆け込み寺に」。これまで仕事現場などで、延べ数千人の相談を聞いた経験を生かし、悩みやつらさを抱える大人が気軽に訪れ、心身を解放できる「大人の保健室」を、昨年春から運営する。
中国・大連市生まれ。父母の離婚により母と来日し、県内で学生時代を過ごした。
高校時代、日本語もまだ分からず周囲になじめなかった近藤さんが頻繁に訪れたのが、保健室。居心地が良く、時には話も聞いて支えになってくれた。中国にはこうした「保健室」はなかった。
養護教諭を目指し短大に進学。当時家庭教師をしていた子どもが不登校で、原因は親子関係にあると気付いた。子どもの問題はむしろ親にあり、親こそがさまざまなストレスに苦しんでいる|。その実感が「大人の保健室」の原点となった。
医療現場で働き、患者のカウンセリングを担当、産業カウンセラーの資格も取得。昨年春から塩尻市のイベントスペースで週1回「保健室」を開き話を聴いてきた。「心と体はつながっている」と東洋医学やボディーケアを学び、昨年秋から松本市のリラクゼーションサロン「TUKANOMA」を拠点に悩み相談に応じている。
独立した店舗を持つのが夢だ。自身のカウンセリングで人生を見つめ直し、それを歌にして歌う「(仮称)自分の人生を謳歌(おうか)する」イベントも春に行う予定で参加者募集中。
「自分が日本に来た意味が分かった。経験を生かし、困っている人に寄り添ってできる限りのことをしたい」。TEL080・2333・2239。詳細は公式LINE(https://line.me/ti/p/F29nppCE8S)。

新しい形式の食堂 髙砂美織さん(27、塩尻市広丘原新田=写真左上)
地域課題解決願い夢の食堂運営

「こんばんは」「いらっしゃい、どうぞどうぞ」。夕暮れ時の公民館に住民が訪れると、真っ先に明るい声と笑顔で迎え入れる。エプロン姿で注文取りに、給仕に、皿洗いに─と忙しく駆け回る。
昨年7月から、塩尻市の原新田公民館で毎月第4月曜、地域食堂「月よう食堂」を運営。同公民館の学習支援を利用した小学生らも立ち寄り、無料の夕食をおなかいっぱい食べていく。午後6時ごろから大人も訪れ、居酒屋メニューで歓談する姿も。
塩尻市社会福祉協議会の職員6年目。小学生の時、児童虐待をテーマにした小説を読んで衝撃を受け、福祉の道を志した。「一人では何もできないが、社会福祉士になって人々をつなぎ、少しでも問題を解決したかった」
社協では、生活に困り事を抱える人や、既存の制度・サービスでは解決できない地域課題と向き合い、人と人との連携で課題解決を目指し、まちづくりにも貢献する。市内に少なかった子ども食堂も、市と共同で三つ立ち上げた。次第に「そういう皆さんを見ていて、自分でも(食堂を)やりたくなった」。
地域の公民館や食育に取り組む農家の協力もあり、とんとん拍子に夢が実現。子どもの食材費の一部を、大人が飲み代で実質的に負担する、子ども食堂と居酒屋の融合スタイルを取った。
「今後は訪れる子どもと大人の関係をつなげる、ご飯以外の仕掛けも考えたい」。食堂から、地域のつながりの輪を広げていく。
1月は22日に開催。運営手伝いや寄付、食材提供も歓迎。詳細はインスタグラム(「月よう食堂」で検索)。

協力隊員として地域活性 池戸通徳さん(60、木曽町福島=写真左下)
老若男女集う交流の場を

木曽町の地域おこし協力隊員として活動中だ。旧中山道沿い、町文化交流センター(福島)近くの空き家を改修し、こどもカフェや多目的スペースの運営を始める。建物には「ペチカ」(薪(まき)ストーブの一種)を導入し、住民交流や商店街活性化、エネルギーの地産地消といったライフワークに力を注ぐ。
1947(昭和22)年建築で10年ほど前から空き家だった建物を購入。1階はこどもカフェの運営とキッチンカーが出店できる土間に、2階の和室は多目的スペースにする。間取りの中心にはペチカを据え、自然エネルギーを循環させる。
ボランティアが運営に携わる美術館に魅力を感じ、飯田市職員を早期退職し2021年、木曽町の協力隊員に。「木曽おもちゃ美術館」のディレクターを担当するほか、福島の空き家を購入、ペチカを入れて改修し「サードプレイス・ペチカんず木曽」を開いた。屋号は、第3の居場所とペチカに集う人を意味する。
県の依頼で昨年から毎週1回、「信州こどもカフェ」を開くことになった。集う看護学生や親子連れなどの間に、交流が生まれてきた。
この流れをさらに推し進めようと、町中心部への移転を決心。現家屋は県外から町に移住を希望する家族に借家として提供する。
23年秋から改修を始め2月末に完成、4月から運営を始める予定。「木曽の住民としてどう貢献できるか、生きていくかを意識し、町の人と一緒に盛り上げていきたい」と話す。「人生の第4コーナーを過ぎた60歳以降を、思いきり走り抜きたい」