大町 旧第一中学校の卒業生 母校の姿と記憶映像作品に

学校再編により昨年3月に閉校した大町市の旧第一中学校の卒業生で、カメラマン・映像クリエーターの大久保空さん(20、同市平)とピアニストの平山つららさん(20、東京都)が、母校で撮影した映像作品を制作した。校舎は2年後に開校する統合小学校に転用されるため、改修前の姿と記憶を映像と音楽で紡いだ。

校舎に流れた時間を表現

タイトルは「記憶の旅」。制服を着て母校を訪れた女性が、教室や体育館などを巡る。階段や床などに木がふんだんに使われた校舎の美しさや、小学校になると高さが変わると考えられる、水道の蛇口を映したシーンも。
一定の間隔で刻まれるピアノの音や、教室の椅子に座った女性の上履きの爪先が一定のリズムで動く描写が、この校舎で過ごした時の流れを表現する。窓から入る自然光を生かし、大久保さんが多彩なカメラワークを駆使。後半で平山さんが、思い出の体育館のステージ上でピアノを奏でる場面も印象的だ。校歌や生徒会歌のメロディーをアレンジして忍ばせたという、平山さん作曲の叙情的な旋律が見る人の心に染み込む。
母校がなくなる心情を映し、序盤は寂しげだった曲調は、次第に明るく。音色の変化とともに「新しい未来を担う小さな子どもたちが育っていく場所へと変わります」とのナレーション。「全て終わりでなく、続いていく部分を知ってもらい、前を向いていけるように」との思いを込めた。

同級生で吹奏楽部の仲間でもあった二人。東京で生まれ育った平山さんは、小学校卒業後に親元を離れ、大町市に移住したピアノの恩師宅から3年生の4月まで同校に通った。昨秋、松川村で開かれた平山さんのコンサートの撮影を大久保さんが引き受けた際、「閉校になった母校を映像作品で残したい」と意気投合した。
同校と旧仁科台中が統合した大町中学校コミュニティ・スクールの協力で、昨年11月に校舎内で撮影。約15分の作品に仕上げ、3月23日の校舎開放イベント時に上映した。
作品を見た卒業生の原田一花さん(17)は、女性が廊下を走るシーンに「自分たちもああだった」と懐かしそう。大久保さんは「昼休みにいち早く体育館で遊びたいと、駆けていた自分たちの姿を重ねた」と笑う。
上映があった日、撮影に協力した勝野英男さん(49、同市)から平山さんに、サプライズで“卒業証書”が手渡された。平山さんは「大町はもう一つの故郷。一中で確かにみんなと過ごした証しをもらい、うれしかった」と涙ぐんだ。
「記憶の旅」は、5月をめどにユーチューブで公開する予定。詳細は大久保さんのインスタグラム=https://www.instagram.com/sora_film.photography/=で告知する。