【ビジネスの明日】#03 フロンティア・スピリット社長 横澤英樹さん

福利厚生に力 人材育つ会社へ

産業廃棄物の収集や運搬、解体工事などをするフロンティア・スピリット(松本市和田)と関連3社は「働く人達のための改革」と銘打ち、手厚い福利厚生制度を昨年から相次ぎ導入している。
年間12日間の有給休暇の増設、残業削減。最大500万円の奨学金支援、病気で長期療養時には最大200万円の一時金と最長100日間の有給休暇。高校や大学に通う子がいる社員には、入学時に一時金と毎月一定額を支給する。こうした制度立案の中心人物が横澤英樹社長だ。
導入理由の1つは「有望な人材の獲得」。産業廃棄物にかかわる業務は、きつい、危険と敬遠されがち。売り手市場の今、人材は人気の企業へ流れてしまうが、新制度をPRした今年、会社見学など同社を志望する学生は、例年の4割増と大幅に増えた。
「以前は会社の利益を上げることに執着していたけれど、子どもが東京の大学に入学してから、いかにお金がかかるかを実感した」と横澤さん。社員との対話なども通して、「社員あっての会社」と意識が変わったという。
奨学金の返済をかかえる新入社員向けの支援は、「やるなら全国一になろう」と、社員とともに他社の制度を研究。10年間同社に在籍すれば、最大500万円の返済ができる計算に。「全国的にも最高額の補助」と自信を見せる。
社員の育成を進めるため、「経営企画室」を設置した。グループ各社から集めた若手社員で構成し、福利厚生制度の立案や運用をする。長期療養時の給付金の支給に備え、年間600万円ほどを積み立てていくが、その管理や運用を任せ手腕を試す。将来の幹部候補でもある。
売り上げは対前期2割増と好調だが、福利厚生などにかかる経費が増え「利益率は下がっている」と苦笑いする。2年後には30億円を投じ県内最大級の焼却炉を建設予定の同社。「社員が入社時から社長になりたいと夢を抱ける環境を整え、自分が退いても100年続く会社を目指したい」

【プロフィル】
よこざわ・ひでき 代表取締役社長。松本市笹賀在住。専門学校を卒業後、自動車関連製品などを製造販売するサンコー(塩尻市)に入社。1995年に父・三郎さんがフロンティア・スピリットを設立したのと同時に入社。04年に関連会社社長、11年に40歳で同社社長に就任する。47歳。
(嶋田夕子)