【記者兼農家のUターンto農】#33 霜の影響

冬信州ならではの地産地消

今年、自家用の果物は、あまりできなかった。リンゴもナシも。春先のこの連載で遅霜のことを書いたが、そのせいかもしれない。
県内ニュースでも、リンゴの収穫量が少なく、霜の影響だと報じられた。ただし、味はいいという。
うちもせめて味には期待したいと、軒先にぶら下がる渋柿を見て思った。いつもざらざら実がなる木に、今年は数えるほどしか実が付かなかった。干し柿にするためにつるしても、「のれん」とも「すだれ」とも言えない「すじ」にしかならず、さみしい。遅霜をもたらした天候に、今度は適度な寒暖を願う。
「不作は霜のせいではないかもしれない」と話すのは、県農ある暮らし相談センター(塩尻市宗賀)の農業アドバイザー、山村まゆさんだ。「隔年結果」という言葉を教えてもらった。実がよくなる年と、ならない年を繰り返す現象で、柿にはよくあるという。
実際、同じ塩尻市内ながら、山村さんの家の柿は今年たくさんなったという。軒先には立派な「柿のれん」ができた。
山村さんは、干し芋も作っている。この時期の保存食作りは、14年前に信州に移住してきて間もなく始めたという。保存料などを使わず、安心して冬の間も野菜を味わう。「農ある暮らしは、栽培だけでなく、食が絡むと広がる。推したい魅力です」
以前に留学していたスイスでは、インゲンを干していたという。真っ黒になったのを、冬、煮戻して食べる。長く自家野菜を食べるために工夫を施すのは、洋の東西を問わない。
食べることなら、農家でなくとも楽しめる。直売所などに行けば、地元の野菜が並んでいる。柿はないかも知れないが、大根や野沢菜はあるはず。干したり、漬けたり。冬には、信州ならではの地産地消が味わえる。