【記者兼農家のUターンto農】#41 複業で農業

複数業者がタッグの組合制度

前回、繁閑の差の大きさに触れた。就農に関心はあっても、そこが不安という人は多いと思う。
不安を埋める仕組みはないかと調べると、「特定地域づくり事業協同組合」という制度が目に入った。過疎地域に通年雇用を生み出すため、複数の事業者が一体で職員を雇い、時季に応じて忙しい職場で働いてもらう。2020年に根拠法ができ、組合には国や自治体の財政支援がある。
県内では生坂村と小谷村で始まっている。生坂村で昨年末に働き始めた斎藤忠宏さん(49)を訪ねた。
斎藤さんは、新潟県上越市出身。川崎市で働いていたが、農業をやりたいとUターン。田畑を借りて、家庭教師などをしながら耕作したが、住まいから農地が遠く、うまく栽培できなかった。
そんな時、知人から生坂村にある古民家の管理を持ち掛けられた。家の目の前に畑があり、好きなキノコ狩りも楽しめる―。そう思い、昨年移住した。
困ったのは生計の糧だ。造園や運送の仕事に就いたが、体を痛めるなどして続かず。折しも、村の特定地域づくり事業協同組合が職員の募集を始めた。
組合は、村の農業公社、社会福祉協議会、ブドウ園、建設会社が設立。昨夏から職員を募り、初めての採用者が斎藤さんだった。
建設会社が最初の職場になった。今も現場で作業したり、パソコンで事務処理したりしている。この後は、ブドウ園で働くことになりそうという。
4社のどこかは選べないが、残業がなくて週休2日。オフを農作業などにしっかり使える。「毎日、まきでたいた風呂で幸せを感じる」と斎藤さん。
いろいろな職場を巡るため、「専門的な技術が身に付くか、不安はある。農業もたいしてしていない」。確かに、組合を農閑期の働き場所に使うということではなさそうだ。ただ、農をする基盤にはなる。斎藤さんは「定住して自給自足したい」と将来像を描く。結果的にJターンになりそうだ。
農業で生活するのに、こんな方法もある。