【記者兼農家のUターンto農】#55 緑の濃さが違うリーフ

肥料不足?雨続き土から流出

「抜けちゃったなあ」。リーフレタスの畑を見渡しながら、父が言った。以前、苗が枯れてしまう病気が出た畑だ。ところどころ苗がないことを指しているのかと思ったら、そうではなかった。
「あそこ、色が薄くなってるだろ」。言われて見ると、葉っぱの緑が薄いリーフに気づく。周りと比べると、黄色っぽい。何株かの固まりが畑に点々とあって、緑がまだらになっている。
雨が続いた時期に土中の肥料が流出したのではないか、と父は見立てた。「抜けた」というのは、肥料のことだった。
この畑は、元は田んぼ。土壌の保水力の良さが、病気の引き金になったのに続き、裏目に出たことになる。
調べると、葉の色に影響する肥料の成分に窒素があった。リン酸やカリウムと並ぶ肥料の三大要素で、タンパク質や体をつくる基になる。他には、葉緑素をつくるマグネシウムも、足りないと葉が黄色くなるという。
肥料が抜けたせいで緑が薄いのかと思うと、残念さとともに、もったいなさが湧く。昨年来、肥料が高くなったという報道を見聞きしていたからだ。
昨秋あたりから、窒素肥料である尿素が話題になっていた。中国の輸出規制で足りないという。うちにも「輸入尿素」と書かれた肥料袋があったから、気になっていた。
最近は、ウクライナ情勢でも肥料高騰がニュースになった。この場合は塩化カリウムで、ロシア産が入らなくなったという。
そもそも肥料原料はどれも輸入が大半だ。これまで通り入ってきても、円安で高くなる。何かと社会全体でインフレが懸念材料になる昨今。農家も先行きを考えて悩ましい。
緑の濃さが違うリーフを食べ比べてみた。畑でちぎって口に入れる。かんだ瞬間、苦みが強かったのは、色が薄い方の葉っぱだった。濃い葉は、むしろ甘いかも。肥料はやっぱり必要なのか。