【記者兼農家のUターンto農】#74 田畑の虫

よく見たコオロギ減るイナゴ

先週の中村小太郎さんのコラム「自然農奮闘記」はイナゴが話題だった。私にもイナゴ捕りの思い出がある。
稲刈りの時、子どもが田んぼに持って入ったのは、ビール瓶だ。跳ね回るイナゴを追い、捕まえては茶色の瓶に押し込んだ。中をいっぱいにするのに苦労しなかった。
最近、気が付くと、イナゴの数はずいぶん減っている。田んぼ1枚を歩き回っても、瓶をいっぱいにはできそうにない。そもそもイナゴを捕ることをしなくなった。
虫が全体として少なくなったという話をよく聞く。解剖学者の養老孟司さんは、虫好きの仲間と集まるたびに嘆き、世界的な現象らしいと話すという。「サイレント・アース」という本の書評で記している(毎日新聞9月24日付朝刊)。
なぜ虫が減るのか。同書は「犯人」の一つに農薬を挙げ、養老さんも同調する。かねて言われていることだが、改めて「やはり」と思うのは、イナゴの減りようを実感しているからだ。
農家としては複雑な思いがする。中村小太郎さんのような自然農の手間は、どの農家もかけられるわけではない。農薬のおかげで以前より人手いらずで米ができ、地域の水田が保全される面がある。収量も安定する。
だが、とイナゴの跳ばない刈田に引っかかる思いは否めない。
虫については、この秋、新たな発見がリーフレタス畑であった。コオロギをよく見た。緑の葉との組み合わせは記憶になかった。
環境に配慮した農薬使用になった証しなのか、有機物を多くする土作りのおかげなのか。本当のことは分からないが、ポジティブな推測を巡らせられるのは作業の清涼剤だ。
昨今、昆虫食が注目される。自分はイナゴを食べなくなって久しいし、コオロギを口に入れることも今はまだできないが、虫が主役の一角という収穫の秋も面白そうだと思った。