【記者兼農家のUターンto農】#76 柿

豊作と不作を繰り返す

庭の柿が実った。方言の「ざらざら」という語感がぴったりなほどに、たくさん。多過ぎて、重みで折れた枝があった。
干し柿にする渋柿を取るのに、低めの脚立で用が足りた。下の方の枝で、十分な量が苦もなく集まった。
木全体の1割も取ったかどうか。残りは熟すに任せ、鳥の餌になるものもある。
通勤や取材で通る道の脇にも、点描画のようにオレンジ色の実で彩られた木が目立つ。サル被害の呼び水になっている地域もあるのでは、と心配になる。
去年は、なり具合が寂しかったように思う。うちの干し柿は、正月の鏡餅用をそろえるのがやっとだった。
「隔年結果」という果樹用語を思い出した。結ぶ果実が多い豊作と、少ない不作を繰り返す性質だ。木の栄養量が年ごとに偏ることで起こるらしい。柿はこの性質が非常に強いという。今年は当たり年なのだろうか?
「春先に凍霜害がなかったことも影響しています」と、県野菜花き試験場(塩尻市)の専門技術員、伊原竜夫さんが教えてくれた。逆に、去年は春の霜があった。地域的に一斉に不作になって、今年のにぎやかな豊作に一役買った。
柿農家は、栄養バランスのブレを摘果で調整して隔年結果を防ぐ。だが、うちもそうだが、「庭先果樹」はなりっぱなし。これだけ豊作だと、来年は推して知るべし。今年は、干し柿を例年に増して味わっておいた方がよさそうだ。
伊原さんによると、今時分、道すがらにオレンジが目立つ理由には「落葉病」もあるという。庭先の木は、農薬で防がないので感染しやすい。すると、葉が早く落ちて、実があらわになる。その実は、葉に回る分の栄養をもらって早く熟す。
今年は、冷え込みが急に厳しくなって、秋が早足で駆けてきた印象がある。柿の木の風情も働いているのかもしれない。