作物の慈雨が農家には試練
リーフレタスの出荷値がずいぶんと下がった。
信毎の「物産相場」欄で見ると、1カ月ほど前は京浜の市場でL規格1箱(15株入り)の標準的な値が2000円を優に超えていた。それが9日は700円。安値は550円にまでなった。経費を考えると、赤字の恐れも出てくるレベルだ。
高値を付けていた頃から父は反動を心配していたが、値下がりのペースは予想外に速かった。「こういうことなんだよなあ」。相場は読めない。何度も味わってきた諦めだ。
それにしても、と私は思った。値崩れの理由を知りたい。流通関係者に聞くと、6月の雨が引き金だという。
5月まで、県内は例年に比べて低温で干ばつ気味。作物の生育は抑えられた。コロナ禍を見越して作付けが少なめだったこともあって、出荷量が伸びず、高値につながった。
それが6月、気温が上がり、雨が降った。気象庁が関東甲信地方の梅雨入りを発表したのが、平年より7日遅い14日。作柄が一気に良くなった。
レタスの出荷は、時期がずれるはずの松本平と南佐久地方で重なり、さらに群馬県からも。「量がドカッと出てきた」と流通関係者。コロナ禍で小さくなっていた需要のコップから一気にあふれた。
つらいのは、1株ごとの出来の良さが、さらなる安値を招くことだ。業務用のカット野菜に加工する場合、1株が大きいほど少ない株数で量を賄えるため、加工業者は買う量が少なくて済む。
確かに6月は、畑でリーフを詰めた箱が重かった。出来の良さを誇らしくも思ったが、お金の面では皮肉な結果になったのかもしれない。
需要に見合った出荷にしようと、産地で時期をずらしたり、コロナ禍を見越したりして計画しても、目算は天候で大きく狂う。「露地物の宿命」と流通関係者。6月の雨はレタスには恵みだったが、農家には試練をもたらした。