【中村小太郎・駆け出し百姓の自然農奮闘記】#27 「雪形」を目印に農作業

私は、雪解け具合で農作業のスイッチを入れます。
北アルプスには少し変わった山の名前が多くあります。「白馬岳」「爺ケ岳」「蝶ケ岳」などなど。私の田んぼから見える山は「常念岳」です。
この時期、雪解けが進み、自然は天然の絵画「雪形」を山肌に現します。これを目印にして農作業をしている農家は多いのではないでしょうか。
「そろそろ常念坊が登り始めたぞ、田んぼに水くれろ」。常念岳に現れるお坊さんを見て、安曇野の農家の人々が言い合っていたらと想像すると楽しいですね。本当にけさを着たお坊さんが山の右手から登っているように見えてきます。
爺ケ岳は、なんと春に種まきをする老爺の雪形からその名が付いたそうです。
現代では気象観測の精度が上がり、天気概況を基に農作業の日程をつくりますが、農事歴に雪形が使われていた頃の方がロマンがありますね。
そうこうしているうちに、私のところの水路ざらいが始りました。水利組合員総出で水路の掃除と点検です。農閑期にはほとんど顔を見ない百姓仲間の元気そうな顔を見ることができてホッとする1日です。また今年も始まるんだなと気を引き締めます。
みなさまのところから見える山の名前の由来を考えてみてください。農作業に関連していたら、私と同様、スイッチにしている農家がいるのかもしれません。